ご縁さん
ご縁さん
私が生まれた地域では、お寺のご住職のことを、
このように呼びます。
父の7回忌でも13回忌でもないのですが、
母の意向を汲んで、
家族の意向を汲んで、
ご縁さんに来ていただきます。
お経をみんなで唱えて、
お酒と食事で、ご縁さんをおもてなしするのが、
私たちの最高のひとときになります。
お酒が大好きなご縁さんです。
気持ちよく話をしてくださる、いい感じのご縁さんで、
ご自身のこともたくさん話してくださいました。
仏教の国々を見てきた話。
私たちが幸せに暮らせるように、
海外旅行を勧めてくださり、
それとはなく、
家族の様子を知っていただき、
母は足が痛いと嘆いていることも、
穏やかに聴いてくださり、
母は満足そうです。
今も昔も、
ご縁さんを大切に思う気持ちが少しも変わりません。
私たちの家族がこうして過ごせているのは、
やはり、ご先祖様があってのことなのです。
ご縁さんは、ありがたい人なのです。
そのご縁さんが、帰りしなに、
孫が6人いるが、好きな孫と、
あまり好きになれない孫がいるのだけれど、
どうしようと私に聞かれたのです。
私は素直な気持ちで、答えました。
人間ですから、
いろいろな気質や性格があります。
好きな人は、きっとご自分とよく合う感じがするのではないですか。
人間ですから、合う、合わないの感覚はだれにでもあるんじゃないですか。
いいとか悪いとかではないと思います。
私がそう答えると、
ご縁さんは反応がある孫が好きなのだとおっしゃっていました。
私はその言葉をそのまま受け取りました。
ああ。いいこと聞かせてもらったとご縁さんが言ってくださったのです。
そして、私に一杯お酒を注いでくださいました。
おいしい、おいしい。
格別のお酒でした。
ご縁さんをとても近くで感じ、親しみが持てました。
父に感謝です。
父は笑顔で見守っていてくれることでしょう。